平井雷太のアーカイブ

親は毎日「早くしなさい」 2003/12/1

2003年5月より毎日新聞『新教育の森』に連載された記事の第20回目をご紹介します。

2003年(平成15年)12月1日(月曜日)

親は毎日「早くしなさい」
−第一歩は「一緒に決める」から−

 親は家庭で、毎日のように「早く起きなさい」から始まって「早く着替えなさい」「早く顔を洗いなさい」「早く食べなさい」「早く学校に行きなさい」、家に帰ってくれば「早く勉強しなさい」「早く寝なさい」と「早く〜しなさい」と同じセリフを繰り返していませんか?

 指示・命令で動かそうとしなければ、子どもは自分からは決して動かないと思い込んでいるかのようです。

 先日も、ある懇談会で、中1生のお母さんから、「うちの子はなにをやるにしてもやる気がなくて、私に言われないと何もしないんです。どうすればやる気が出るものでしょうか?」という相談を受けました。

 そこで「どうしてそんなふうに思われるのですか? 具体的にお子さんに何かやらせたいと思っているものがあるのですか?」と聞いていくと、「実は、土・日は彼が皿洗いの係になっているのですが、なかなか洗わず、結局夜の12時をすぎてから洗うことがよくあって、どうしても『早く洗いなさい』と私が何度も言う羽目になるんです」と言われるのです。

 そこで「結局は洗うのだから、いいじゃないですか? 洗うだけでは不満で、このように洗ってもらいたいというのがあるんですか?」と聞いてみると「9時までに洗って、12時前には寝てほしい」と思っていることがわかりました。

 そこで、お母さんに「9時までには洗ってほしいとお母さんが思っていることは、息子さんは知っているんですか?」と聞くと、息子さんにその話をしていないのです。子どもは、いつまででもいいから洗えばいいと思い、お母さんは9時までに洗ってほしいと思っているのですから、もうここでズレが生じています。ですから、お母さんが『早く洗いなさい』と言い続けたところで、子どもが洗うようにはなりません。

 そこで、「私だったら、次のように子どもに話すかもしれない」と言いました。

 「『早く皿を洗いなさい』としょっちゅう言っていたけど、言われて嫌じゃなかった? 私は言うたびに嫌な気分になっていたのよ。でも、9時までに洗ってほしいって話していなかったからだったのよね。どう? この時間までに、洗える?」

 親の気持ちを聞いて、実際に何時までに洗うのかを決めるのは子ども自身です。決めても、決めたようには、すぐにはできないかもしれませんが、できなくても決めたことで、できない自覚を持つことはできるのです。

 「親が子どもを指示・命令で動かさない」ということは子どもが自分のすることを自分で決める」ということにつながるのです。同じ場にいる人たちに確認と了解をとって一緒にやることを決めていく。これが場づくりの第一歩です。

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