平井雷太のアーカイブ

お金かけても解決しない 2004/2/16

2003年5月から毎日新聞『新教育の森』に連載された記事の第28回目をご紹介します。

2004年(平成16年)2月16日(月曜日)

 お金かけても解決しない
−大人自身が「専門家依存症」脱却を−

 私は学生時代に家庭教師のアルバイトをしていたのですが、親の期待に応えるべく熱心に子どもの面倒をみました。すると私の収入が増えると同時に、一時的に成績は上がるのですが、結果的には私がいないと勉強しない子どもになっていました。その後、塾を開いたのですが、ここでも同じような経験をし、手をかければかけるほど塾依存症の子どもになっていきました。

 人は、困ったことがあると「お金をかければ解決するのではないか」と考えることがあります。子どもの成績が上がらないときには塾や家庭教師を探し、ひきこもりや不登校などの問題には、カウンセリングや在宅訪問指導など、専門家といわれる人たちのもとに走ったりします。そして、効果が思わしくないと、「もっと塾に多く通わせれば……」「もっとカウンセリングの回数を増やせば……」と、誰もが専門家依存症に陥りやすくなってしまいます。

 私は先の経験から、自発的な学びのシステムを作りたいと考え、「らくだ教材」を作りました。そして、週に何度来ても金額は同じという月謝システムを作り、生徒が塾に来る回数と、私の収入が無関係になるようにしました。その結果、自分から勉強する習慣がない子は毎日のように通ってきますが、自分で決めた宿題を家でやる習慣が身につくと回数は減り、いま通っている子の中には、6週間にI回の子もいます。

 私の塾では、学習記録表を自分でつけるのですが、そうすると学習のペースをつかむことができ、次にするべき課題がみえるようになるので、何をしたらいいかを人に聞く必要がなくなっていきます。やることを自分で見通せるというのは、人に自立の自信を与えるので、この時期に子どもの表情がいきいきしはじめることが多く、その様子を見て、「全体像がわかっていて、自分の位置が確認でき、先の見通しが立てられる」という力をつけていくことが、子どもが自立していくためにとても大切なことだと気づきました。ほとんどの場合、全体像も答えも評価も先生や指導者が持っている、という状況だと思うのですが、それでは子どもは権力を持った大人から、自立のしようがないのです。

 もちろん専門家の力が必要なこともあるでしょう。しかし、大人があせりや不安から逃れるためだけに、安易に専門家に子どもを預けようとせず、専門家をうまく活用しながら、まずは大人自身が「依存関係」を自問することが大事なのだと思います。そして、「先生がいないと困る」という事態から解放されていくことが、あせりや不安を解消し、子どもの自発性をつぶさないようにしていく秘けつかもしれません。

mainiti2-16.jpg