平井雷太のアーカイブ

学校の中に多様性を 2004/3/22

2003年5月より毎日新聞『新教育の森』に連載された記事の第32回目をご紹介します。

2004年(平成16年)3月22日(月曜日)

学校の中に多様性を
−夜間中学に最先端の教育がある!?−

 社団法人日本家庭生活研究協会が主催するシンポジウム「コミュニケーションの再生を目指して〜男が変わる 企業が変わる 家庭を変える〜」に参加した折、講師の柴田励司氏(マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング代表取締役)から、「いまのアメリカの最先端の企業のキーワードはダイバーシティー(多様性)で、ピラミッド型からネットワーク型の組織に変わりつつある」と聞きました。同質のチームより異質なメンバーから成るチームの方が創造的に問題を解決し、多様な顧客ニーズに、より適切に対応できたという調査結果が多く出ていると言うのです。そこで欧米の先進的企業では、ダイバーシティーを経営戦略と位置付けながら、意識改革や環境整備に力を入れています。ダイバーシティーは、性別や年齢などの表面的な特徴だけではなく、個々人の学歴、生い立ち、考え方などの異なった背景や立場をも含み、すべての勤労者に適応するため、企業がその重要度を認識し、精力的に取り組むようになってきたのです。

 そんな話を聞きながら、フッと浮かんだのは、夜間中学校を舞台にしてのドキュメンタリー映画「こんばんは」(森康行監督)でした。この映画のなかでは、16歳から92歳まで約80人の生徒が一緒に同じ場で学び、国籍も17カ国に及んでいます。それゆえ、本当に豊かな学びの場が出来上がっていると思いました。

 ところで、私が開発した「インタビューゲーム」をさまざまな場で体験してもらっていますが、同学年の同じクラスの者同士、同じ学校で働く教員同士だけでやると深い学び合いになりません。しかし子ども対大人、教員対親という組み合わせにすると、まるで違う内容になります。異質なもの同士であれば、他者に関心が向かい、相手を知りたくなる欲求が生まれて、そこに学びが起きるのです。そう考えると今の学校は、効率化を求めて、能力別クラス編成の方向に流れているのですから、さらなる均一化に向けて、ダイバーシティーとは逆の流れにすすんでいるのが現状でしょう。これでは、学校が、ますます学びが起こりにくい場になっていくのは必至です。

 夜間中学では、学習開始年齢が一人ひとり違うのですから、その違いを前提にした上で、一人ひとりに寄り添った教育が可能です。らくだ教材でも、異年齢で多様な人たち(幼児からお年寄りまで、外国人も障害者も)が同じ場で学べることが、長年の実践で実証されています。昼間の学校にも多様な人たちが出入りし、一緒に学ぶ場をつくることができれば、学校のなかにも、ダイバーシティのある場が必然的に生まれるのではないでしょうか。

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